大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)172号 判決 1951年5月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小田元吉の上告趣意について。

原判決の認定引用した第一審判決の判示事実と原判決挙示の証拠とを対照すれば、被告人は第一「好色話の泉」と題した男女の性交並びに男女陰部を表現した、戯文等の記事を、第二「其の夜我慾情す」と題し死女を姦淫する光景を、また、「変態女の秘戯」と題し変態女の性交を夫々詳述した記事を、第三「処女の門、十七の扉ひらかる」と題する男女性交の光景を記述した記事を夫々掲載した新聞各一万二千部づつを販売したというのであって、その記事はいずれも徒らに性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められるから、原判決がかかる記事を掲載した多数文書を販売した被告人の所為を刑法一七五条所定の猥褻文書の販売行為に該当するとしたのは正当である。従って、所論前段は要するに男女性交の露骨な具体的描写を欠くものであるとする独自の見解に基く事実誤認の主張に帰し、また、所論後段は原審の裁量に属する量刑不当の主張であるから、いずれも上告適法の理由と認め難い。

よって旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例